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​専門領域セミナー②

講演テーマ

『脳血管疾患における理学療法の変化』

井野辺病院総合リハビリテーションセンター

   リハビリテーション部 主任 大戸 元気 先生

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 継続的に医療を受けている脳血管疾患患者は2017年には111.5万人とされ,年間では再発を含めると約29万人が発症すると推定されている。また,脳血管疾患は要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の総数で第2位となっており,後遺症の軽減や社会復帰を目指す上でリハビリテーションの役割は重要である。

 従来の脳血管疾患のリハビリテーションは,片麻痺に対しては利き手交換や残存機能の活用に焦点があてられており,脳の可塑性や麻痺の改善に対するエビデンスが不十分であった。しかし,1996年にNudo RJ博士が,人工的な脳梗塞で上肢麻痺を呈したリスザルにリハビリテーションを行い,運動野が拡大したと報告したことで,脳血管疾患のリハビリテーションの考え方やアプローチに変化が生じてくる。2000年代より神経機能回復に基づく治療介入手段として,神経可塑性のメカニズムを補助して機能マップを再組織化させるニューロリハビリテーションの言葉が散見されるようになり,現在のリハビリテーションアプローチで主流となっている。また,ニューロイメージング技術の発達で,脳の神経回路や可塑性について徐々に明らかになっており,リハビリテーションへの応用やニューロリハビリテーションの根拠を後押ししている。

 467論文が含まれた脳血管障害後の理学療法のエビデンスを報告したシステマティックレビューとメタ分析では,電気機械的に補助された電気刺激を用いた歩行練習,体重免荷型トレッドミルトレーニング,CI療法,筋電トリガー型電気刺激,麻痺肢の筋力トレーニングが統計的に有意であったとしている。このようにエビデンスの蓄積や技術の発展により時々刻々と変化しているのが現状である。

 本セミナーでは,脳血管疾患に対するニューロリハビリテーションの理論と当院で実際に行っている電気刺激療法や臨床場面を中心に概説する。

ー講師紹介ー

【略歴】

2007年3月 島根リハビリテーション学院卒業

2007年4月 井野辺病院入職 理学療法士免許取得

2014年4月 大分県立看護科学大学大学院入学

2016年3月 大分県立看護科学大学大学院卒業 修士(健康科学)

現在に至る

 

【論文】

大戸 元気, 加藤 貴志, 井野邉 純一, 脳卒中片麻痺のリハビリテーションにおける電気刺激療法について, エレクトロニクス実装学会誌, 2020, 23 巻, 5 号, p. 409-415.

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