top of page

​特別講演

『呼吸理学療法の未来と展望』

公益財団法人結核予防会複十字病院

呼吸ケアリハビリセンター 部長

千住 秀明 先生

千住2.JPG

 2020年1月15日、わが国でCOVI-19の第1号患者が発症した。しかし、当時は、世界の死亡者数が455万人(日本16,993名:2021年9月15日現在)に及ぶ危機的な感染症になるとは誰も想定していなかった。主たる感染原因は、COVI-19が含まれた唾液等の飛沫感染であるため予防に3密(密閉、密集、密接)を避けることが求められた。理学療法士の職業は、他の医療職と異なり「密接」が必要な職種であり、特に呼吸理学療法にはコンディショニングの中に気道クリーニング(排痰法)の手技が含まれているため常に患者の飛沫に曝される機会が多い。当院においても「排痰手技は厳禁」となり、非結核性抗酸菌症等の気道クリーニングを必要とする患者には、「感染予防やQOL維持」のために必要な手技の指導が極めて困難な状況となった。急遽、飛沫感染を予防し、他の患者や理学療法士自身を感染からも守るための陰圧室と1回の排痰介入にPPE1セットでの対応が求められた。

しかし一方では、我々が永年患者に求めてきた「自己排痰率70%以上(自分自身で総痰量の70%以上を出す)」や「生活の中にリハビリを落とし込む」と言う患者への指導・教育方針はCOVI-19感染拡大による通院困難患者にとっては極めて有効な手段であり、間違っていなかったという確信を得る機会ともなった。当院の患者医療圏は60kmと広い。広いが故に遠距離通院が規制されたCOVI-19感染拡大下では、患者にとっても病院経営上にも大きな問題となった。

 今、医療の取り巻く「変化」に理学療法士がどのように「適応」していくかが求められている。本講演は首都圏の呼吸リハビリテーション中核病院の6年間の呼吸リハビリテーション啓発活動とCOVI-19との戦いを「変化と適応」をキーワードに呼吸理学療法の未来と展望を検討する。

bottom of page